ささやかな備忘録

いつか死ぬ日の僕のために

2次元とヴィジュアル系 前編ー2次元のヴィジュアル系バンドは「リアル」か?

元ばんぎゃる的に、オタク的に、結構ずっと気になっていることがある。

アニメ、ゲーム、漫画などの――つまり、「2次元」の作品におけるヴィジュアル系バンドの存在についてである。

 

2次元の作品には「ヴィジュアル系バンド」とはっきり冠したバンドのキャラクターがそこそこの頻度で登場する。冠していなくても明らかにヴィジュアル系を意識しているバンドもそこそこ登場する。

一般的に「派手」なイメージが定着しており、元々長いこと2次元との親和性が高いと言われてきているヴィジュアル系なので、登場頻度が高いのもおかしなことではないだろう。

 

しかも、作品展開で楽曲がリリースされる際には、本家本元のヴィジュアル系バンドが楽曲を提供したり演奏を担当することも多くある。

私がこの話題を思い出したのも、先日の記事で触れた「ヒプノシスマイク」に登場する四十物十四(14th Moon)がヴィジュアル系バンドマンであるという設定であり、彼の楽曲を実際にヴィジュアル系シーンで活躍しているバンドであるLeetspeak monsterが提供していること *1 や、

つい昨日「ARGONAVIS from BanG Dream!」のゲームに登場するヴィジュアル系社会人バンド・Fantôme Irisの楽曲を長年ヴィジュアル系シーンを引っ張っているバンドであるシドが提供するというニュース*2を目にしたことがで切っ掛けである。

 

このように、正直ヴィジュアル系バンドブームは少し落ち着いてしまっているように思える現在も、2次元にはヴィジュアル系バンドがそこそこ登場する。

つまりこうした設定は、2次元において流行り廃りのある設定というよりかは、ある種普遍的なものになっているようにも思えるくらいである。

 

しかしながら、バンギャの目線でこうした現象を見ていると、些か気になる部分がある。

それは、2次元に登場するヴィジュアル系バンドたちは「リアル」であるのか?ということである。

 

実際にバンギャをやってきた私から見ると、「2次元のヴィジュアル系」にはたまに「うーん、なんだか勘違いしてない?」と思う部分もあるように思えるのである。これは、友達のバンギャと話しているときにも話題になったことがあるので、私という一個人だけが思っていることではないのだと思う。

 

ヴィジュアル系興味ないよ―という方々からすると、「ヴィジュアル系」と聞いて思い浮かべるものはもしかすると結構ワンパターンなのかもしれない。

しかし実際は、ヴィジュアル系と一口に言ってもバンドの雰囲気も音楽も様々である。その多様性というか、自由度の高さがヴィジュアル系の一つの魅力なのではないかとも思える。

2次元のヴィジュアル系は、それこそ上述のように「リアル」に活躍しているバンドが楽曲を提供することも多い。そのようにリアルと交わるような形で制作されているにも関わらず、妙なステレオタイプが作り上げられているというか、記号化が行われてしまっていることが多い気がしてしまうのである。

(アニメや漫画というのは、ある程度物事を大げさに書くものであるから、リアルの「ヴィジュアル系」の有名な部分や目立つ部分を抽出してパロディ的に扱っているという部分も大きいのかもしれない。)

 

この妙な記号的な設定の存在というのが、実際は結構多種多様であるリアルなヴィジュアル系に触れてきた人間にとっての「違和感」になっているのではないかと思うのだ。

 

まあでも逆に、そうした2次元のヴィジュアル系の設定が「ありそう」なものであることも勿論多々ある。

そこで私は、その「違和感」の正体とは何であるのか、そして2次元のヴィジュアル系がどこまで「リアル」であるのか――そもそも2次元のヴィジュアル系は「リアル」であるのか、ということについてごく簡単にだが考えていきたいと思う。

 

考えるにあたり、実際の作品やキャラクターを取り上げて検証していきたいと思うのだけれど、該当するようなキャラクターが登場する漫画やアニメ、ゲームは細かいものも含めれば数多くある。それを全てここで網羅するのは難しいだろう。

そのため中心とする対象を絞りたいと思うのだが、今回は「リアル」という観点に着目したいので、より現実に近いスタイルを持った作品やキャラクターを中心に取り上げたい。そこで、基本的には実際に楽曲が制作・発表されている作品やキャラクターを中心に考察し、補完的に漫画など視覚のみで登場するキャラクターを紹介したいと考えている。初めに挙げた2作品のように、実際に活動しているヴィジュアル系バンドが楽曲を提供している場合には、提供元と提供先の毛色の相違も比較できるだろう。

また、リアルのヴィジュアル系バンドは基本的に男性メンバーで構成されていることが殆どで、女性メンバーが所属する場合もあるにはあるが、圧倒的に数が少ない。そのため今回扱う2次元のヴィジュアル系においても基本的には男性メンバーで構成される設定のバンドを取り上げることとしたい。

 

そして前述の通りこうした2次元のヴィジュアル系は、そこそこ前からコンスタントに登場しているので、もしかすると年代によって変化している特徴というのもあるかもしれない。折角の機会なので、古い方から順番に比較も交えて検証していこうと思う。

 

最後に、この記事での「ヴィジュアル系」「V系」の意味合い、また「リアル」なヴィジュアル系というのは、ある程度は一般的な解釈に基づいて入るけれども、最終的には私が今までライブや雑誌やはたまた友人との会話など、経験上体感してきたものを元にしている。そもそも「ヴィジュアル系」という言葉自体指し示す対象がはっきりと固定されているわけではないと思うので、決まった意味に合わせて考えていくのは難しいかな、と思うためだ。そのため、人によっては「違うんじゃない?」と思う部分ももしかしたらあるかもしれないが、そこはご理解願えればと思う。(もし大きく認識違いをしている部分へのご指摘などありましたら、マシュマロかTwitter : post_siteimasuまでご連絡ください。)

本記事の記載において、取り上げる作品やキャラクター自体を批判・攻撃する意図は一切ないということも、申しおきたい。

 

前置きが長くなってしまい恐縮だが、ここから実際に考えていこうと思う。

***

(タイトル横の年数は作品またはキャラクターの初出年を記載。)

 

1.NOIR(卓球とハードロックと僕。)1996年

参考になりそうと思った作品の中で一番古いのはこれ。タイトルは「ハードロック」だけど、登場するバンドは完璧にヴィジュアル系で、漫画の紹介文でも「人気ヴィジュアル系バンドNOIR」となっている。人気ヴィジュアル系バンドNOIRのボーカルは実は高校3年生で、卓球部の部長を掛け持ちしているという設定で、彼やメンバー、後輩部員の日常が描かれる4コマ漫画。

メンバーのビジュアルは長髪をセットして、黒い服を着るといういかにも90年代ヴィジュアル系な雰囲気。描かれる日常もライブ風景やラジオ番組でのファンのメッセージなども結構リアルな雰囲気。その辺りを色々な所で見聞きした当時の状況と照らし合わせると、結構リアルだな、と思う。(90年代をリアルに生きてきた世代ではないのであくまで聞きかじりの知識だけど…。)そのリアルさにボーカルが高校生で卓球部員という要素が加えられることで上手くギャグに仕上がっていて面白い作品。

 

2.Λucifer(快感♡フレーズ)1997年

比較的古いものでヴィジュアル系バンドが登場する作品というと、やはりこちらが思いつく。よく内容がツッコミどころ満載なことについて触れられているが、今回はそれは置いておこう。ビジュアルは、黒髪短髪~長髪派手髪までいるし、恐らく革であろうジャケット、黒ハイネックのノースリーブやハーネスなど、一昔前のコテコテな感じにまとめられている。にしては化粧が薄めな感じがするなぁという印象はあるけど、90年代だとブームもあるし、ソフビも流行っていたし、大きなバンドは段々化粧が薄くなるのが常である。Λuciferは作中で東京ドームの公演を行っている描写があり、かなりの大人気バンドなので年代を考えると割とリアルなのかも?と思った。

Λuciferは楽曲提供ではなく、実際に同名のバンドが合わせてデビューという形だったから、見た目は結構寄せている部分もあってソフトな感じだし、曲も結構キャッチーだなという感じ。なんだけど、タイアップ曲の歌詞は、なかなかのクサさがあって、ソフビっぽいのにそんなに中二なことある!?という印象もある。まあそもそもこの物語の事の始まりが、主人公が落とした中二病全開な歌詞をボーカルの咲也が拾って使うことなので敢えてそういった仕様なんだろうけど、その部分だけ妙に作られている感が強くて(アニメっぽいというか)リアルではないかなと思った。(タイアップの作詞をしているのはメンバーではなく作詞家さんだし。)しかしまあ、劇中のキャラクターの素行の悪さはある意味リアルかもしれないが(?)

ちなみに現在、主人公と咲也の2人の息子が登場する続編のゲームがスマホアプリでリリースされていたり*3する。息が長い作品である。片方の息子もコテコテの衣装を着用しているが、何故ファーを肩に纏うのだ。(後述)

 

3.不破尚・VIE・GHOUL(スキップ・ビート!)2002年

こちらの作品は、主人公がずっと尽くしてきた歌手の男性に捨てられた復讐のために芸能界に入り、次第に演技の楽しさを知っていくというサクセスストーリー。その復讐相手というのが、不破尚である。

彼はバンドマンではないが、ヴィジュアル系ロックシンガーという肩書で自分で作詞作曲をして歌を歌っている設定であり、作中では主人公が共に出演するヴィジュアル系らしいPVを撮影するストーリーもある。このPVが90後半~00年代のコテ系や耽美系の「あるある」な感じで調べていて唸ってしまった。笑 アニメ版で実際に映像が制作されているのだけど、天使と悪魔が恋に落ち、最終的に天使が堕天してしまう設定、チェーンの付いたコテコテの衣装、楽園にいる綺麗な女性の出演、羽が飛び交う演出…と「うわ~わかる~」が盛りだくさんである。曲もオルガンの音に重ねたギター音、「残酷なほど美しい愛に」といった程よく退廃的な歌詞など、懐かしさを感じてしまう。声を担当しているのが宮野真守なのだけど、彼のビブラートを効かせたやや誇張気味の歌い方も一昔前のコテ系っぽくてハマっている。漫画の該当巻の発売が2004年頃なので、タイムリーにその時代のヴィジュアル系要素を取り入れていて、バンドではないけどリアルだなと思った。実際シーンでもソロの人も結構いるし。(個人的には少し前のDAIGOを彷彿とさせるものを感じたりした。)

ちなみにこの作品には他にも、尚のライバル的な位置づけでVIE・GHOULというヴィジュアル系バンドが登場するが、こちらもコテコテの黒衣装や銀髪などコテ系っぽさがある。ボーカル霊能力者だけど。(棺桶に薔薇を敷いて眠っているという設定も如何にも漫画的ではあるけど、耽美なイメージ作ってるバンドマンなら言いそうな気もする…。笑)

 

4.七瀬瞬/ヴィスコンティVitaminX)2007年

こちらは乙女ゲーム。攻略キャラクターの一人がバンドマンという設定である。作中では単にインディーズバンドとのみ言及されているが、瞬のキャラクター設定が「ヴィジュアルクール系」*4であり、キャラソンの紹介文も瞬のキャラに合わせて「ヴィジュアル系風の楽曲」*5に仕上がっていると記載されているため、今回は扱うことにした。

瞬はベーシスト兼バンドリーダーという設定である。彼以外のバンドメンバーは攻略対象ではないため、ストーリーにあまり関与しないようであるが、ビジュアルは登場しており、OADアニメ版の制作記念としてバンドの楽曲も制作されている。楽曲は疾走感があってカッコいいけど、爽やかで軽めな感じがそこそこコテコテな見た目と反していて何だか「うーん、ちょっと違う気がする」という気持ちにさせられる。歌を担当しているのがボーカルの祐次のCVとは別の歌手の方で、その歌声もかなり爽やかなのもあるかも。(ちなみに私は歌手の方の人のファンなのだけど、ヴィジュアル系がどうのを置いておくとライブパフォーマンスがかなりカッコいいのでとても好き。)歌詞もちょっとアニメっぽいクサさが強くてうーん…といったところ。この感覚って何なんだろう?歌詞中の英語の使い方とかだろうか。瞬のキャラソンもあるのだけど、歌詞の岩崎大介節が強すぎるのでヴィジュアル系がどうとかで判断ができない。岩Dは岩Dなので…。

あとどうしても気になるのが衣装である。瞬のステージ衣装は肩から襟に沿って大きなファーが付いている。彼は制服姿でもバンドマンらしい出で立ちをしているが、やはり肩からファーを乗せている。祐次なんてカッチリとしたジャケットの襟に合わせてファーが付いている。何故だ。何故そんなにもファーを担ぐのだ。まあお兄系が流行った時に私服でファーの付いたコートとか着ているメンバーはいたし(私が好きだったバンドマンは当時を思い返し「ダッセェファーのついたジャケット着てた」と述べていた)、制服の方は100歩譲ってアリかもしれない。(2007年頃って丁度お兄系が流行していた時期だし?)しかし、実際に衣装で大きなファーを担いでいるヴィジュアル系バンドマンはそんなにいない。全身モコモコとか羽を肩に乗せてる人はたまにいるけど。だからこのコテコテ衣装にでかいファーというビジュアル設定にはすごく違和感がある。

この「大きなファーを肩から担いでいる」というビジュアルは、他の2次元のヴィジュアル系でもそこそこ頻繁に見かけるものであり、2次元のヴィジュアル系において割と記号的に用いられている設定のように思える。しかし、上で述べた通り実際のヴィジュアル系ではそういう衣装をまとっている人はそんなにいない。ファーを担がせておけばそれっぽく見えるというステレオタイプが何故か出来てしまっているように思えるが、これはリアルではないように思う。こうした傾向って、もしかするとリアルの「ヴィジュアル系」と、その要素を取り入れたファッションである「お兄系」を混同して扱ってしまっていることに起点があるのでは?と思ったりした。ヴィジュアル系のファッションを取り入れたお兄系の要素をヴィジュアル系の要素そのものと思ってしまっているというか…。しかし、それとは逆にドラマーの衣装に袖がないのは高評価である。ドラマーは袖をなくしがちなのである。そこはリアルだ。

 

  1. Dampire(Diabolic Garden)2008年

ヴィジュアル系が出てくる作品知ってる人いる!?」と呼びかけたら友達のバンギャが教えてくれた漫画。悪魔封印師が主人公であり、依頼を受けて悪い悪魔を封印していくストーリーである。Dampireは作中に登場する悪魔と人間が組んでいるバンドである。筆者は本作を読んだことがないので、ビジュアルだけの判断になってしまうが、首輪の付いたコテコテの衣装やアイブロウのピアス、M字バングにメガネに口ピにゴシック調の衣装、そして何よりキュッと上がった短い眉毛がゼロ年代ヴィジュアル系あるあるといった感じでとてもリアルである。この作品の絵を見ていて、眉毛の雰囲気って結構重要だなと思った。本作自体がゴシック色の強い作品で、バンド以外のキャラクターもゴシック&ロリータやパンクファッションに身を包んでいるし、著者の方がV系やゴシックに詳しい方なのだろうなと思う。

 

6.ReVott(DEATH EDGE) 2012

こちらの作品もゴシック色の強い作品。人間に侵食して憎悪を増幅させようとする天使を退治する異形と人間に取り憑いた天使が「視える」ようになった少女のバトルストーリーである。作中で異形の一人である夢魔のキャルロットが趣味のゴシック・ブランドの服を買いに行く時に出会う男性がヴィジュアル系バンドのボーカルであり、キャルロットがめちゃくちゃ早番のチケットを渡され(仕方がなくだが)ライブを見に行くシーンも描かれている。(そして黒い服の女の子しかいないから魔女集会(サバト)と勘違いする。)

バンドは3人組で、メンバーに一人女性がいるが、殆ど出番がないため今回はこの作品も扱うこととした(まあ実は女性がいても炎上しない理由らしきものが描かれたりもしている)。ライブが始まると、ボーカルは半裸に首輪とロンググローブ、ギターの女性はへそ出しでロンググローブ、ベースの男性はノースリーブの黒Tに首にストールを巻いている。すぐに脱ぐバンドマンはいるが、初めから半裸で出てくるバンドマンはあまりいないぞ!?ストールの男性は割とカジュアルな出で立ちなのでボーカルのコテコテ感とのちぐはぐ感もあり、ファンタジーだな…と感じてしまう。スカーフに関しては突然オサレ系が混ざってしまったのか、やはり4.同様お兄系が混同されてしまっているのかという感じである。

しかし、バンドはファンタジーな雰囲気だが、一部のお行儀のよくないバンギャの描写は結構リアル。最前の割り込みや自分を勝手にメンバーの特別な存在だと思い込んでいるファンの描写など…(そこに天使が漬け込んでくるのだけど)妙にリアルで、連載当時読んでいて「わぁ妙にリアル~…」と思った記憶がある。ちなみにバンドメンバー以外の服装もゴシック調で可愛い。

 

7.シンガンクリムゾンズ(SHOW BY ROCK)2012

こちらは、当時「サンリオ、どうした!?」と話題になったバンドもののキャラクタープロジェクトである。(サンリオはサンリオタイムネットの頃から突然こういうことをする。)本作の登場人物はミューモンという獣人のキャラクターであり、人の姿に変身した時も獣耳が付いている。沢山のバンドが登場する中のひとつが、シンガンクリムゾンズである。

公式で「痛い中二病全開の、V系ロックバンド」*6と言われている通り、チェーンやスタッズ、十字架がふんだんにあしらわれたゴテゴテの衣装をまとい、「オレ達は深紅色の心眼でこの澱んだ世界を見続けル・・・。」というキャッチコピー通りの中二病全開な歌詞がついた曲を演奏している。薔薇を咥えていたりもして、メンバーのアイオーンには耽美系っぽさもある。楽曲は複数の作詞作曲者が提供しているので曲によってやや雰囲気が違うが、コテコテの見た目とは裏腹に爽やかすぎるかな?というものもある。4.のヴィスコンティ同様、ややアニメライズされてしまっている感がある。しかし、重めのドラムや重なるギターが響く曲もあり、「あ~っぽいな~」と思わされる曲もあるのでそこそこリアルかもと思う。元DELUHIのLedaが提供している曲もあり、こちらはリズム感やサビで突然入るファルセットなどコテ系っぽさに忠実であり、やはりシーンがわかっている本家のバンドマンが作った曲という感じである。

歌詞は全体的に漆黒や深紅や囚われの鎖や月といったワードが頻繁に用いられている。昨今のヴィジュアル系だとコテ系や耽美系でもここまで直接的に黒っぽいワードを盛り込みまくっている所も少なくなってくるし、やや誇張気味なのが気になってしまうが、シンガンクリムゾンズは設定自体が「中二病全開」ということで敢えて誇張されているのだと思うしこれで良いのだろう。ただ、このあたりの年代の作品になってくるとやっぱり作り手が「ヴィジュアル系ってこうでしょ?」というイメージで取り入れてくるものが所謂「コテ系」や「耽美系」っぽいものばかりなのが気になってくる部分がある。ヴィジュアル系=コテ系っぽいもの+耽美要素という記号化が行われてしまっている気がする。

そして、やはり気になるのは衣装である。だからなんでそんなに大きなファーを肩に担ぐんだ!?クロウの衣装、シャツの裾がボロってなってる所なんてそれっぽいのに肩がモコモコしているのだけ気になる。ロムもなんでトップス上から下までモッコモコなの!?やはりファーを付ければヴィジュアル系っぽいという謎のステレオタイプが作られてしまっているらしい。ファーってゴージャスだし、画面映えするのもあるだろう。クロウたちはコテっぽいのに、アイオーンはゴシック耽美系でそこが混ざってしまっているのもやや違和感がある。

あともう一つ「これはリアル!」だと思ったのは、ボーカルのクロウが他メンバーと比べて圧倒的に背が低いところだ。勿論全員がそうではないのだが、ヴィジュアル系バンドって何故かボーカルの身長がやや低めな所が多い*7。あと眉毛の角度もリアル。

 

長くなってしまったので、これ以降は次の記事で後編として書きたいと思う。

2次元のヴィジュアル系は、元のヴィジュアル系シーンの流行をタイムリーに取り入れているわけではなく、後から「ぽさ」を抽出しているのだと思うからゼロ年代くらいまでは黒っぽいキャラクターばかりなのも頷けるのだけど、このくらいの年代ならオサレ系やキラキラ系も現れて少し経つし考慮して欲しさはある。でも、誇張と記号的表現が主である2次元作品にそれを求めるのは難しいのだろうか…という気もする。でもそういうイメージだけを追いかけていってしまえば、あまりにもリアルからは乖離してしまい、ある種の古臭さだけが残ってしまうのではないかという危惧もあり。私はやっぱり折角だから2次元ヴィジュアル系にもカッコよくいてほしいのだ。その辺りが気になってきてしまうのが、後編で紹介する2010年代の後半にかけての作品である。

また近いうちに更新します。