ささやかな備忘録

いつか死ぬ日の僕のために

"永遠"よりも尊いものー本能バースト演劇「sweet pool」スプステ 感想など

去年も推しの作品を中心に観劇後に感想を書き留めておきたいな~という作品が沢山あったにも関わらず、忙しくて溜めまくってる間に年は過ぎ、気合入れてチケット取った舞台も乗らないから数回で良いか~と思ってた舞台も気づけば二桁の半券が手元にあったり、年末も観劇してたら年明けてるし、一大イベントも終わって気づけば新年も3ヶ月過ぎていました驚き。

 

なので書きたいことは沢山あるけど、今は気持ちが熱いうちにこの前まで観劇していた作品の話を書き留めておきたくて、筆を執っている。

他の所で断片的に感想は書いていたけど、観劇して個人的に心に残る作品になったので、やはりまとまった感想を書きたくて一つの記事に書くことにした。多分、それなりに長い。

*****

去年の秋のある日、次の春の推しの出演作が発表された。

本能バースト演劇「sweet pool」だった。

告知を見た当初は「なんて?」と叫びそうになった。衝撃的だった。

 

私は舞台のオタクだけど、ドラマダはキャラクターが好きでアニメや実況見てたことがあったり(実はドマステも観に行ってる)、咎狗は漫画読んだことがあったり、アニメの…アニメなんて無かったけど…EDを好きな方が歌ったりしてたので、ニトロプラスキラル作品のことはそれなりに知っていた。なのでsweet poolについても大まかには知っていて、正直一番舞台化は無いだろうと思っていたので驚いたし(多分みんなそう)、推しをなんていう目に遇わせるつもりなの!?という思いだった。笑

でもそれと同時に、舞台上でどのように表現して、どこまで攻めるつもりなのかもかなり興味があった。キャストインタビューでも非常に気合いが入ってる様子が伺えたのですごく楽しみになった。

通うつもりだったので、折角だから原作をやってから観ようと思い、公演前にPC版をプレイした。ノベル系のゲーム自体初めてやったので分岐!?どれ!?になりつつ無事にコンプした。哲雄エンドで「こんなん泣くよ…」と思ったし、思っていたよりセクシャルな描写が本筋に食い込んでいるので、ますますどこまで表現できるのか気になった。

そうこうしているうちにあっという間に公演の幕が上がった。

 

この記事は、上の通り、原作を一応履修してからスプステを全公演観劇した出演者のオタクが感想や所感を書き留めたものである。

この先は完全にネタバレ有なので苦手な方はご注意を。また、原作プレイ済だけどゲーム以外の情報は知らないことも多いので、なにか間違った記載があったらすみません。一個人の感想なんだな、と思っていただければ。あと、ニュートラルな感じで書きたいので例によって私の推しが誰なのかは特に明記しないで書き進めるけど、見ている時間が長い分、言及に偏りはあると思うのでそこもご了承を…。(遡ってもらったら恐らく即バレだとは思うけど)

 

今回私は全通したので初日から観劇しているけど、実はその前にゲネ招待で観劇させていただいたので、初めて観たのは睦ルートだった。

初見で一番初めに抱いた感想は「ここまで攻めるんだ!?」である。

原作をプレイしたのが公演直前で非常に記憶に新しい状態で観劇したので、話がかなり原作に忠実に丁寧に描かれていることがよくわかったのだけど、原作に忠実であるということ、それつまり、めちゃくちゃ攻めた演出をされているということであった。

私が一番気になっていたのはお風呂と初めの科学室のシーンだった。何故なら、過激な描写が必要だけど話の本筋の発端に絡む部分なので、ぼかすと伝わらなくなってしまうように思えたからだ。睦ルートも中盤までは通常(哲雄)ルートと同じ流れなので、両シーンとも初見で見ることが出来たけど、私の憂慮なんて秒で吹き飛ばすほど本気で作り込まれていた。舞台上に風呂が運び込まれて蓉司が服を脱ぎ始めた時の衝撃は言葉に代え難いけど、照明と演技ですごくつややかに表現されていて、こちらも息を呑んだ。あんなに細いのにめちゃめちゃ色気出せるの、すごい才能と演技力じゃないですか?(ちなみに終演後イベの司会の時に度々触れていたけど、櫻井圭登さんのお勧めシーンはここらしい。笑 私は初めて櫻井さんを観た時も同じような状況だったので脱ぐこと自体にあまり驚きはなかったけど(?) ) 

初めの科学室のシーンもそれまであった蓉司のモノローグがぴたっと止まって、台詞も説明もなく静かに”あの”場面に突入するのが演劇らしい表現だなと思ったし、緊張感と色気が空気から伝わってくる感じで見てて良いの?ていう危なげで生々しい雰囲気が作品らしくてすごく良かった。

全体を通してモノローグがすごく多いのも結構攻めるな~と思ったけど、ここまでガッツリとモノローグの台詞の雰囲気から感情を読み取るみたいな見方って今まであまりなかったから結構新鮮だったし、意外とくどくなってなくてありがたかった。

蓉司と哲雄のシーンは予想以上の2人の体格差に驚いた。原作イラストだと蓉司もそれなりにガタイが良いけど、櫻井蓉司の消えちゃいそうな儚い感じも、病弱で、何となく人との関わりが苦手で浮いてるっていう雰囲気にぴったりで良いなって思った。哲雄と並ぶと余計に儚さが引き立つのがまた良いな~。哲雄、実際に人が演じているのを見ると、視線一つひとつはすごく真剣に、でも優しく蓉司のことを捉えているのがわかるのに、行動はぶっきらぼうだから、実はとっても不器用なのが佇まいだけで伝わってくるのがすごく良いなと思った。(砂川脩弥さんが上手いからだとは思うけど) そしてシンプルに顔が良い。そりゃ女が勝手に寄ってくる(?)各ルートの感想は後でそれぞれまとめて書くことにするけど、屋上が歩み寄りの象徴的な場所になっていて、初めはま~お互い一方通行だったのに、蓉司が自分の考えをはっきり伝えられるようになって、最終的に哲雄も自分のことを話せるようになって徐々に近づいているのを体感出来てキュンとしたりした。

共通パートは蓉司が善弥に絡まれるシーンも多いけど、無邪気に話しかけてくるのに急に豹変したり、さっきまで笑顔だったのにもう目が笑っていなかったりとワンシーンの中ですごく不安定な感じがまさに善弥という感じで、見ているこちらもゾクッとした。哲雄が蓉司を助けに来る場面の怒鳴りとかすごく迫力があったのに、分岐後はすごく脆い部分が見えたりと表情や行動の振れ幅がすごく広いのでいい意味で引っ搔き回して話を進めている感は原作よりあったかも。初見のダンスの時にパッと目が合った瞬間があったんだけど、もう捕食されるんじゃないかっていう鋭い視線でシンプルに「怖い!!」って思った。今まで宇野結也さんがクールな役をしているのしか見たことがなかったから、こんなにどんどん表情の変わる役もこなされるんだな、と驚いた。

3ルートのメインキャラの中で唯一蓉司が最後まで陥落しない感じで終わるし、絡まれた時も嫌そうな雰囲気を醸し出してたり、基本的に怒りとかショックで震えたり睨みつけてたりしてたのが印象的だった。姫谷も渋くてカッコ良かったし、お父さんの見てて苦しくなる狂気もすごく伝わってきたな。大人陣の安定感は欠かせない感じになってた。

睦のことも後でまとめて書きたいけど、折角初見が睦ルートだったので初見の時の感想を書き留めておくと、本当にダンスの振り付けがものすごく良く出来てる!というのがすごく印象的だった。あまりにも睦の心の動き、睦の行く末そのものだな、と思ったから。そこまでのどんどん狂っていく様子も、序盤の蓉司との楽しそうな会話との対比ですごく胸が苦しくなったし、蓉司にカッターを向ける科学室のシーンの2人、本当に熱演!張りつめたピリピリした空気が伝わってきてこちらも思わず緊張して見入ってしまった。

あと個人的に以前ドマステを観に行った時に、蒼葉ちゃんが一通り全部ひとりで説明するのが若干間延びした感が否めないなぁと思っていたので(ノベル系ゲーム原作という点で説明台詞が多いのは仕方がないんだけど)、今回上屋先生がナレーションしてくれてたことで、蓉司のモノローグに入り込みやすいし、黒幕感も演出出来ていてすごく良いなと思った。上屋先生、お茶目だし、先生方に怒られたくない上屋先生と結構色々(アドリブで)ズバズバいう蓉司の組み合わせめちゃめちゃ好きだったな。笑

初っ端の「彼ら」の概念(?)のダンスも絶えず蠢いている感じが伝わってきて良かった。終盤で同じ振り付けで蓉司と哲雄が二人で踊る場面があるけど、そちらは"この2人であること”が強調されていてまた違った意味を持つのも面白いな、と思った。

あと各エンディングで、ED曲が入るタイミングがすごい良かった。絶妙で。

 

初日までどういう雰囲気で来るのか全く想像がつかなくてドキドキしてたけど、想像の遥か上を行く攻め具合で、演劇としてどこまで表現できるのか限界に挑戦してやる、という挑戦心をすごく感じた。見る側としても新鮮だったし、原作の雰囲気を壊さないように心の深い部分を描写するために過激で生々しい描写を演劇的に落とし込むことが欠かせないというのが伝わってきたし、作品をただのイロモノにはしないという気概を感じて嬉しかった。やっぱり本気が感じられる作品って心に残るので。

 

ここからは各ルートごとの感想とか観て考えたことを書き留めておきたい。

・睦ルート

原作プレイ前から知っていたルートだったから、衝撃のラストをどう落とし込んでくるんだろう~と楽しみだった。

序盤の蓉司との会話は本当にみんなが運命に翻弄されるまでの癒しだった…。杉江大志さんが毎度ながらアドリブ番長すぎて日に日に蓉司というか櫻井さんも巻き込まれて色々話すようになるのが面白かったな。笑(アフタートークの時、杉江さんがアドリブとかどこかわかんな~いってシラを切ってて笑った)「ヨウズィ~帰ろうぜ~あ、ごめん…蓉司のji、ziにしちゃった…最近英語勉強してるから…」ていうバージョンが斬新で好きだったのと、バーガーショップの場面の食べない蓉司に対して「悲しむ人が…いるよ…」(蓉司も押されて「少しは食べるよ…笑」って言った)の時が好きだった。微妙な空気になって蓉司が睦を小突くのがパターン化してきてこの2人のこの感じ…見覚えがあるな…!?て思った。笑

この明るくお茶目な序盤から、中盤にかけて段々無理に笑ってることが増えてきて、様子がおかしくなっていくのが伝わってきて胸が苦しくなった。蓉司に無意識に触れようとして手を引っ込める場面とかすごく些細だけど確実に気持ちが動いているのがわかるのであ~~…!ってなった。

そして科学室のシーンは、会話する2人の間の空気が本当に張りつめていて、ピリピリした緊張感が伝わってくるから(哲雄ルートの時も含めて)思わず息を飲んでしまった。どんどん激情に駆られて上擦った怒鳴り声になっていくと同時に目も狂いを帯びてく睦の迫力に本当に気圧された。目が本当に怖くてすごいなって。「気になって気になって気になってさぁ!」の台詞も日によって叫んでいたり、堪えきれなくてこぼれ落ちる感じだったりして、どちらも睦だなって思った。追い詰められて恐怖でぐちゃぐちゃになって動けなくなってる蓉司の困惑の眼差しもすごく緊張感があって好きだった。櫻井さんの視線とか、目の演技が好きすぎる。目の前で聞く「やめたら俺のこと好きになってくれるの?」の切なさと言ったらもう形容詞し難すぎる。

科学室の後にドラマCDのお話が入ってるとのことで、視点が睦に切り替わって蓉司への気持ちが語られるので、観ていて睦の苦しみが深い所まで理解できて、一層胸が苦しくなった。保健室の回想はすごくほっこりするのに(私はうさぎを呼ぶようにま~こと♪が好きでした)、その後のモノローグで自分でもどうにも出来ない辛さを吐き出してる様子のコントラスが本当にしんどかった。最前の丁度モノローグをする正面くらいだった日があって、近くで見るとどうしようもない辛さが疲れ切って涙に濡れてる目から伝わってきて苦しかった。自分の腕に噛み付くシーンはゾクッとした。(櫻井さんが今日本当に杉江さんの目が怖かった!って言ってた日もあったな)今まで色んな所で杉江さんを見たことがあったけど、スプステの杉江さん、今まで見た杉江さんの中で本当に一番良い!と思った!

そして、上でも書いたように睦ルートのダンスが一番睦の物語とか行く末をそのまま表している感じで、すごく秀逸!と思った。哲雄が蓉司を引っ張っていって階段上がっていって、睦は阻まれて登れないし、哲雄と蓉司のダンスも哲雄ルートの二人の暗喩ダンスと同じで、暗に2人の歩み寄りや関係性の変化を表していて、それを見る睦の後ろ姿、どんな表情なんだろうな~と考えて苦しくなってしまう…。(睦の妄想である部分もあるんだろうけど)最後の睦の切り裂くようなフリと苦しむ蓉司、そして終わりに全員が倒れて終わるのが本当に睦の狂気そのものですごく良く出来てるなぁとしみじみ思ってしまった。カテコで哲雄が蓉司を脱がせ始めた時は何何何!?!?って動揺したけど。笑 カテコの方の蓉司のダンス、科学室のダンスと振付似てて、動きがきれいで好き。

 

・善弥ルート

原作をプレイした時にちょっと苦手な終わり方で、1回目観劇した時は蓉司が酷くされるのを見てるのが正直しんどくてちょっと目を伏せてしまった部分もあった。暗喩っぽさよりストレートな表現が多かったからだと思うんだけど、ここまで描かないと2人がどういう状況に置かれてるのかは正しく伝わらないと思うので、こればかりは描き方が悪いとかではなく私の地雷の問題なので仕方がなく…。

でも2回目以降は結構冷静に見られて(苦手な部分はちょっと目を逸らしてしまったけど…) 睦ルート同様に善弥のモノローグと過去の回想があったおかげで、ゲーム本編だと殆ど触れられていない善弥の心の奥の部分が描かれていたので彼も結局愛に飢えた被害者なんだよな~とわかって切なくなった。宇野さんが挨拶やアフトで善弥が蓉司に対して言っていることとかやってること(カメラで撮ったり新しい服を着せたり)全部きっと本人が親に掛けてほしかった言葉ややってほしかったことなんだと思うと何度か話していて、彼の過去とか親からの扱いを知ると本当にそうだな、と思った。しかも自分が受けたことがない愛だから、人への向け方とか、そもそもの愛し方がわからないから蓉司に対してもああいう形でしか接することが出来ないんだろうな、と考えて辛くなってしまった。

しかも蓉司はどれだけ痛めつけられて傷つけられても心だけは絶対に善弥に落ちないのがまた…。蓉司が光のない目で放つ「殺せ」も、泣いてるのか?という言葉を撤回しろ!と言われた後の「嫌だ」も、弱ってるけど、お前だけには絶対落ちないぞという強い意志を感じて胸を突かれた。そしてその様子を見て憤慨しつつ善弥が溢す「俺のことを見てよ」という言葉も辛かった。無理にでも自分のものにしたはずなのに本当はそうはならなくて、蓉司も傷つけられて苦しんでいるので、本当に2人とも幸せになられないのがやるせないなぁと思ってしまった。

あと、蓉司が小屋から逃げ出そうとして善弥に戻される所から連れ戻されたあとで、怯えきった目から絶望の目に変わるの本当に怖くてすごくゾクッとした。

善弥ルートのダンスは、特にサビがザ・善弥!って感じで無邪気さとか狂気が見えるような振付だったり、右目にピックアップされた振付になってて、前で無気力になっている蓉司との対比が生々しくて、ダンスとして単純にすごくカッコ良いのに思わず息を呑んでしまったりした。あと蓉司目掛けて一目散に駆けてくる部分が絶対逃さない!!という感じでめちゃくちゃ怖くて好きだった。ラストの2人だけ残ってライトが消えていく部分は狂気と美しさをすごく感じた。

 

・哲雄ルート

原作をプレイした時に一番面白かったし、最後の2つのEDがすごく切ないけど好きな雰囲気の終わり方で、キービジュアルの感じから恐らくどちらかのEDになるだろうと思って楽しみにしていたルート。運命に抗う人間の話が好きなので…。

共通部分も当然だけど蓉司は哲雄と一緒にいるシーンや哲雄のことを考えているシーンが多いので、上で書いた屋上の話を含めて2人の心の変化や歩み寄りがじっくり描かれているのが嬉しかった。あと2人の関係性だけではなくて、蓉司自身の心の変化もすごく繊細に描かれていてたのもすごく良かったな。原作でも勿論スポットを当てて描かれている部分だと思うけど、そういう一つ一つの心の動きと関係の変化を表情や視線、モノローグの雰囲気とかでリアルタイムに追いかけられるのが実際に人が演じる醍醐味だと思うし、それを見るのが好きなので、重きを置いてくれているのが嬉しかった。

そういう意味で一番好きなのはプリントを届けに行く場面~最後の哲雄の部屋の場面の辺り。序盤のトイレに連れ込まれるシーンでこれ以上関わるなよ!って叫ぶ時とか哲雄がプリント届けに来て帰れよ!!って言う時は横から表情が見えた時、本当に感情がぐちゃぐちゃすぎて怒ってるのに笑っちゃってたり、静かに懇願してたりして見てる方も苦しくなってしまうくらい困惑や不安が伝わってくるのに、プリントを届けたシーンだとまた違う形の困惑に変わっていて、少しずつ蓉司の心に変化があるんだな~と思った。直後に哲雄母に仲良くしてあげてねと言われて目が泳ぎまくってるのが可愛かったな。

傘のシーンも印象的だった。間近で見ていると、自分から引き留めておいて俯いて困った顔してるのも囁かれて驚いた顔してるのも良く見えて、キュンとしてしまった。その後の自分から取った手を見つめながら考え込んでいる表情に、心境の変化が現れている感じがするな、と思った。(後ろの善弥の占いのシーンもすごく上手く入れ込んであるよね)あと哲雄の傘の差し方がこれでもかというくらい蓉司に傾けられてて、言葉はなくてもすごく大切に思ってるのがよく分かって好きだった。傘の差し方100万点満点。

そして勉強を教わるシーンのうたた寝、原作でもめちゃくちゃ好きなシーンなんだけど、蓉司が先に起きてちゃっかり哲雄の顔眺めてるのが、実際に目の前で展開されるとこんなに愛しい気持ちになるんか…と思った。笑 しかも終盤の方の日で、哲雄の顔に触れようとして哲雄が起きたからサッと手を引っ込めた時があってあまりにも少女漫画で愛しかった。ドギマギして下向いてしか喋れなくてそのまま部屋を後にする蓉司は完全に”落ちたな!”という感じで可愛かった。この流れが特に蓉司の哲雄に対しての気持ちが動く部分だと思うので、これだけ丁寧に描かれているのが嬉しかった。少し飛ぶけど3回目の部屋の時のドキドキ感も堪らないな~と思う。

お姉さんとの電話からはまた少し軸が変わって、蓉司自身に対する心の変化にスポットが当たるけど、その中で、睦との関係性を考えていくという部分もしっかり組み込まれていて、心理的な関係性の描写が大好きなのですごく見応えがあった。原作ありきとはいえ、ここまで心理的な動きを主軸に据えてる舞台作品って意外と多くはないのでそういう作品を観るのが好きな私としては嬉しかった。

睦のことが頭を過ぎってから科学室を経て、お姉さんの病室を訪れる時には、蓉司は人と関わることについてひどく考え込んでいると思うんだけど、お姉さんから自分に関する真実を告げられて、お姉さんの強さとか優しさに触れて、自分の名前が子供に受け継がれたことを知って、自分の変化を受け入れることを通して、人と関わることによる変化も認める…みたいな心情の変化がぐっと伝わってくる描き方だったな、と思う。

この部分の台詞のお芝居は千秋楽が一番好きだったんだけど、真実を告げられた時の俺は?という悲痛な叫びの部分がすごく苦しくて胸が苦しくなってしまったけど、その後自分を受け入れて「俺は安心して狂うことが出来る」の時の強くて優しい声と笑顔が決意を感じられて好きだった。あと16~20日くらいの公演で、枝里香が子供に名前をつけたよ、と伝える時に光があたって蓉司の目からボロボロ涙が落ちていくのが見えてこちらも泣いてしまった。丁度俯いている視線の先くらいの席だった時、泣きながら噛み締めてる表情が切なくて胸にきた。

そしてそのまま睦のお見舞いに行くわけだけど、ここのシーンすごく好きで、いつも噛み締めながら見てしまっていた。はやる思いを一つ一つぶつけるように丁寧に話しながら、時折胸がいっぱいになって上を向きながら真剣に睦に向き合っていて、睦のこと何もわかってなかった…と2人で涙を流しながらお互いの気持ちを話して、本当の友達になれた~という感じがすごく良かった。最初の方の公演は聞かせてよ、睦のことなんでもって言う時に脚にポンと手を置いていたのが、公演が進むにつれて肩になって、最終的に肩を抱いて話すようになっていたり、最後に隣に腰を下ろすようになったりして、全公演を通して一層蓉司が睦の本当の気持ち全部受け止めたいっていうのがすごく伝わってきた。最後の睦のサンキューな、がいつも震えていて胸がいっぱいになっちゃうな~と思いながら見ていた。その後上屋先生に身体のことを教えられる時は、上屋先生の静かな狂気っぷりが怖かった。

最後の蓉司が哲雄の部屋に着いてから、早く自分の気持ちを伝えたいっていう気持ちが急いてる話し方がすごく好きなんだけど、近くで観ると特にはやる気持ちでいっぱいいっぱいになって泣きながら伝えてる蓉司にグッと来た。口数は少ないけど真剣に受け止めている哲雄の表情もすごく好きだし、いっぱいいっぱいな蓉司を強く抱きしめるのは思わずキュンとしてしまう。原作で言葉を遮るように蓉司が自分からキスする所が好きなんだけど、しっかり描かれてて嬉しかった。哲雄の目を見て全部わかっちゃったんだな~としみじみ思った。その後の暗喩ダンス(って言うよね!?)は2人の息のあったしなやかな動きがただ美しかった。特に蓉司が手を引かれて床に背中を預ける所の動きが滑らかですごく綺麗で好き。あと哲雄が蓉司をベッドに誘導する時、瞳が本当に真っ直ぐに蓉司を捉えていて、正直序盤は本能!って感じだった所にしっかり愛(のようなもの)が芽生えているのが伝わってきてすごく好きだった。

そのあとラストの怒涛の展開は、物語としてはすごく面白いけど、実際人が演じているのを見るとより一層運命に翻弄されることの切なさみたいなのが伝わってきて辛いな~と思った。善弥の最期も、善弥ルートとはまた違った形で彼の愛されたかった気持ちが見えてすごく切なかった。ていうか姫谷の気持ち考えるとそこもまた…。

最後の屋上のやり取りは2人の心の歩み寄りの集大成って感じで、会話の"間"が2人らしくてすごく良かった。あの優しくてどこか切ない「それでもずっと俺と一緒にいろよ」、聞いて正気でいられるオタクいるのか?いない。その後の姫谷と蓉司のやり取りは特に終盤の公演の時がすごく好き。追い込まれても屈しない力強さで、思いが高ぶって声が震えているのがすごく"もがいて生きてる"感じで好きだった。千秋楽の2人の気迫すごかったな。

プールの演出は最初はそんなに…と思ってたけど、蓉司の語りが日に日に感情が乗って泣きながらも覚悟の色のあるすごく意志の強い声色で、でも"名前を呼んでほしい"という気持ちも強く伝わってきてすごく胸が締め付けられるなと思った。

そして最後に哲雄が最寄り駅の一つ手前で降りた後のモノローグで、"屋上"と呟いて階段を駆け上がる時に、ちょっと息を切らしているのがマイクに乗ってて、気持ちが急いてる感じなのがすごく好きだったし、その後泣きそうな声でゆっくりと語られるモノローグと「蓉司…?」に胸が締め付けられてもう…言葉にできないな~…と思った。今も書きながら泣きそう。この後のダンスで、哲雄が蓉司を抱きしめようとしてすり抜けていく振付、あまりにも天才すぎるし、哲雄の目から涙がボロボロ落ちていくのが見えてもう切なくて無理だった。特に千秋楽で、中盤で哲雄から手を離して階段を登っていく蓉司がすごく優しくて切ない眼差しで哲雄を見つめているのも胸にグッと来た。一番最後の手を胸に当てる哲雄を近くで見た時、頬に一筋スーッと涙が流れた跡があってあまりにも綺麗でまた泣いた。砂川さん、泣きの演技が上手すぎる。個人的に、14日の公演のラストがすごく沁みたんだけど、丁度その公演の挨拶で砂川さんがもうズビズビです~と言っていたのが印象的だった。その雰囲気が観客席にも波及していたな…と。千秋楽も集大成という感じで沁みた。

 

この作品を観劇しながら私も、永遠ってなんなんだろう、とかハッピーエンドってなんなんだろうとか考えていたんだけど、作品を通して、自分や自分が向き合っていた大切な人が、後から思い返した時に、永遠に続いてほしかったなぁとか、その時は"永遠なのかもしれない"と感じたなぁと思えるような時を持つことが"永遠に続くこと"それ自体よりも尊くて、ハッピーなことなんじゃないかなぁとか考えた。そしてそのために大切に思う人のことをぶつかってでも愛を持って理解して、受け入れていくことが必要だってことなんだろうな~と思った。勿論自分のことも忘れずに向き合って受け入れる…みたいな。ただそれも必ずしも上手く行く訳じゃないのが人間の関わりというものなんだよね、みたいな。すごく個人的な見解だけど、私はそういうメッセージを受け取ったように思ってる。

 

千秋楽はキャスト全員から挨拶があって、レポしてる方がいると思うので詳しくは書かないけど、推しが泣きそうになって天を仰ぎつつゆっくり自分の気持ちを語っているのを聞きながら最前列でガチ泣きしてしまったのは内緒である。みなさん自分の役をすごく愛して、愛について考えて、言葉を紡がれていてすごく素敵なご挨拶だったと思った。中屋敷さんの言葉がオタクの代弁みたいになってたのはちょっと面白かったけど。笑

上でも少し触れたけど、作品を通してかなり身体を張っていたり挑戦的な演出もすごく多くて、表現的にもかなり過激な描写も多かったと思う。でも、それと対比するように登場人物の一つ一つの心の動きとか心理的な関係性の変化とかもすごく繊細に時間をかけて描かれていたと思う。それだけ生々しく深い深い部分まで描いてくれたからこそ、登場人物の心の深い部分が引き立って観ている側も一緒に胸が苦しくなったり、心が震えるのを感じられたり、切なくてグッと来て涙が出るような経験を出来たんだなぁと思った。いろいろな部分でこれからもすごく心に残る作品だなぁと思った。

最初に書いたとおり、この作品には私の推しが出演していて、それが切っ掛けで通ったのだけど、公演を通して私はこの人の表情のお芝居がすごく好きなんだな~と改めて実感したし、推しのこと好きで良かったな~としみじみ思ってしまった。常に新しい引き出しを開いて見せてくれるので本当に飽きないし、これからもまた挑戦し続けてくれるんだろうな~と思うとワクワクしてしまうな~と思う。

詳しくは長くなるから書かないけど、各日のアフタートークやライブもすごく楽しかった!!全部見られて嬉しかった。トークのセットが度々ベッドだったのは本当に笑った。笑

 

完全に余談だけど、初日の最後に櫻井さんが砂川さんと2人でお辞儀して捌けるつもりだったみたいなのに横を見たらすでに砂川さんはいなくてあれ~~!?って顔してたのが本当に面白かった。笑 しかも20日の挨拶で「あれ?待ってる?」っていう顔をしながらまた砂川さんが捌けてしまって、慌てて戻ってきて深々とお辞儀をするのを眺めて櫻井さん大爆笑、もめちゃくちゃ笑った。砂川さん天然記念物? かと思えば櫻井さんは天然ふわふわパンケーキを自分で考えたことを白状させられたりしてて可愛くて笑った。

アフトでそれぞれの印象変わった?て話になり、砂川さんは「変わってないですね」って言ってて、櫻井さんは砂川さんのこともっと怖い人だと思ってたのに「話したら自分と同じだって思った、ふわふわして柔らかい雰囲気とか」て言ってて「匂いがした?」「したね~笑」って笑い合ってて可愛くて困った。2人とも末永くそのままでいてほしい。

 

何かありましたらマシュマロまたは@post_siteimasuまで。