ささやかな備忘録

いつか死ぬ日の僕のために

初めて宝塚を観た

1月某日

明日推しのイベントだな~と思いながらお風呂から上がったら、友達から連絡が来ていた。

何かな?と確認すると、明後日チケットが余っているので観に来ない?という観劇のお誘いだった。その日は丁度何もない休日で、今まで観たことのないジャンルの演劇だったので、私は喜んで誘いを受けることにした。

 

 

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観劇したのは

宝塚歌劇団 星組公演『ディミトリ~曙光に散る、紫の花~』『JAGUAR BEAT-ジャガービート-』である。

今までそれなりに色々な演劇を観てきたけれど、宝塚は初めてだった。

周りの宝塚が好きな人から、独自の雰囲気を持っていると聞いていてずっと気になっていたし、私は女性のファンダムとかファンカルチャーの周辺の研究をしてきたので、宝塚カルチャーにも研究書等で触れたことがあるが、文章で読むのと実際に体感するのは全く違うので、いつか現場で観劇してみたいな、と思っていた。

あと、本格的に男性も全て女性が演じるという演劇を観たことがなくて、どういう雰囲気なのかなというのも気になっていた。(逆に女性も全て男性が演じるという演目は結構観たことがあるけど) なので、当日を楽しみにしていた。

 

友達2人*1と合流して会場に入ると、何となく普段通っている現場とは客層が違っていて、興味深く周りを見回してしまった。

東京宝塚劇場は、お城にありそうな素敵な階段とシャンデリアがあり、明るくて綺麗な劇場だなと思った。

始まる前に誘ってくれた友達が、今回の1幕はしんみりするお話だけど、2幕のショーを見ると大体全部吹き飛ぶから気を付けて、と教えてくれた。(吹き飛ぶ…!?) と2幕が気になり過ぎた。同じく初見の友達と、「メガファンタジー」という名前から既に並々ならぬものを感じるという話をしていた。

すかさず自分のご贔屓の綺城ひか理さんがどの役で登場するのかも教えてくれたので、見逃さずに見ることが出来た。笑

友達とは離れた席だったけど、2階の通路後ろの席を譲ってもらい、初めて観るのにはぴったりの全体を見渡せる席だった。*2

 

1部が始まると、美しい薄紫の服を纏った女性が沢山出てきて舞い始めて、2階から見るとかなり圧巻だった。すぐに咲き誇る花だなと理解して見ていたけど、すごく綺麗な表現だった。(意外とこういう表現って見たことなくて) リラの花ってあまり馴染みがなかったし、何故この花がモチーフ?と思って観劇後に調べたら花言葉が「初恋」で、うわ~成る程…と思った。

程なくして一人の老人(美稀千種さん)が登場して、この老人も綺麗な女性が演じているんだな…。とちょっと不思議な気持ちになった。花たちの語りの後に、ドラマチックに男役の方が登場し、流石の私でもその方がトップであることがすぐにわかった。

 

この男性が礼真琴さん演じる主人公のディミトリだった。

基本的には母国の同盟の人質のためにジョージアに連れて来られたディミトリが、王女のルスダンと惹かれ合い、モンゴルとの戦いに敗れた若き王の遺言によって、王となったルスダンの夫として彼女を支えていく。しかし、他国の侵攻、母国からの侵攻などジョージアが揺れる中で、余所者として嵌められ、他国へと逃れる。そんな中でもジョージアと今後のルスダンを最期まで案じていく…という彼の生涯を描いた作品だった。

 

冒頭でルスダンがディミトリを探しに初めて登場するんだけど、彼を見つけて、いたずらっ子な顔で「どこにいるか足跡でわかる」(すごいな)と話すのがチャーミングですご~~く可愛かった。舞空瞳さん、小顔でスレンダーでとても可愛らしくてずっと目で追ってしまった。丸顔で小柄な可愛らしい女性が好きなので…。リラと同じ色のドレスもよくお似合いで素敵だし、2人のお互いに大切で信頼をしている関係性もパッと伝わってくるシーンだった。

ディミトリを連れてお忍びで市場に出掛ける時も、好奇心旺盛でくるくるとお店を回っている様子に見ているだけで彼女の素直さや可愛らしさが伝わってきた。この素直さが"王"となった時には仇になってしまう部分もあるのだけど、最終的には素直だからこそディミトリを信頼出来たのだと思うし、ディミトリもそんな彼女だから最期まで愛したのだな~と思った。

ディミトリは強くて優しくてしかも美しく、王子然としてはいるけれど、出自によって裏方に回らざるを得なかったり、ギオルギ王の死への葛藤やミヘイルの嫉妬なども描かれていたので、人間らしさを感じられた。だからこそ知性を持って進んでいくことの出来る聡明さが強調されていて、ただのカッコいい王子様ではない生き様のバックボーンのようなものを感じられるのが物語をよりドラマティックにしていて良いな~と思った。ルスダンもディミトリも最後まで芯がブレない所が共通していて、この2人だから国を守れたのかなと思ったりもした。芯がブレないというのは2人の間の愛にも当てはまるし…。

あとディミトリの礼真琴さんは、すごく歌がお上手で、凛々しい楽曲も悲しげなバラードも歌いこなしていて、そこもディミトリの人柄をじっくり知られたポイントであったりした。

 

序盤の大きな見せ場はチンギス・ハン率いるモンゴル軍がジョージアへ攻め込んでくる戦闘シーンだと思うのだけど、殺陣がバチバチの立ち回りではなくて、ダンス寄りの動きになっているのが華やかで印象的だった。中でも、両軍の戦闘服の裾が本当に綺麗に広がるようになっていて、ターンをするたびに舞台上がすごく華やかでありながら、激しく戦闘が起きている様子も表されているのが一番印象的だったかも。本当にそんなに…良いんですか!?というくらい惜しみなくターンをしてくれるので驚いた。笑  大勢のキャストが隊列を作って揃って剣を振ったり回ったりするのも迫力があって圧巻だった。

ここで指揮を取っていたのはギオルギ王で、軍を奮い立たせるように掛け声をかけるのは迫力があったし、剣を振りながら勇敢に進んでいく様にはすごく威厳があるな~と思った。ギオルギ王も芯がブレない人だったし、愛の意味をすごく理解している人だった。序盤で亡くなってしまうけど、この人の思想はディミトリに受け継がれて、終盤でも要になっていくのが良く伝わってくるなと思った。

 

ルスダンとディミトリの婚礼のシーンも本当に衣装が華やかで見ているだけで楽しかった。ジョージアダンス、初めて見たな。一緒に初見で観た友達が宰相マジ許さんと言っていたけど、宰相は本当に嫌な奴ポジだったな…。出自がどうのみたいな話って本当にどうしようもないな…と思ってしまうよね。

宰相に吹き込まれてルスダンがディミトリとルーム・セルジュークの密談を目撃して勘違いしてしまうシーンは、まさかここで足跡で居場所が分かる設定がこんな形で活かされてしまうとは…。ただ愛し合って幸せに暮らしたいだけなのに、ここから少しずつ2人の運命が別れてしまうのが切なかった。

でもディミトリは拾ってくれたジャラルッディーンを裏切って、自分の居場所を失くしてまでルスダンとジョージアのことを守ろうとしていくから、切ないけど格好良くて素敵だったし、最期までルスダンを愛していたことが伝わってくるお芝居でグッと来た。ここでギオルギ王の愛の意味を彼がしっかり受け継いでいるのが分かることもすごくドラマティックだったし、本作はキャッチコピーに「勇気とは、何か。」とあるけど、勇気よりも「愛とは何か」をより強く考えさせられる作品かな、と思った。

ルスダンも最初はお転婆娘で、即位したての頃は「あんな小娘で大丈夫か」とか言われている訳だけど、徐々に凛々しい顔つきになっていって、ホラズムからの侵攻がある頃には政治を行い、軍配をしたり民を勇気づけたりと、しっかり大人になっていく過程が描かれているのも良かったと思う。王になった後のドレスも"可愛い"から"美しい"が似合う様子になられて、すごくお似合いで素敵だったな~。

瀬央ゆりあさん演じるジャラルッディーンも渋くて格好良かった。殺陣をしている時も迫力があってすごく気圧される雰囲気を感じたし。ディミトリが自害した後も、怒るのではなく彼の誇りを尊重した振る舞いするのが大人で良いなと思った。

現代日本で生きていると国を守る、土地を守るためにいざこざが起きるみたいな事ってあまり現実味がない話だと思う。だから、彼らがどうしてそんなにも危険を冒してまで国や土地に執着するのかを全て正しく理解出来ているとは思わないけど、ディミトリの生き様を通して、当時の彼らにとってはそれが命に代えてでも守り切るべきものだったということは理解出来たのかなと思う。あまり馴染みのないテーマだったけど、最後までじっくり楽しむことが出来た。

 

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1幕が終わって連れてきてくれた友達にしんみりしますね…と話していたら、再度「今のうちにしんみりしておいた方が良いよ、全部忘れるから…」と念を押してくれた。

いや、2幕本当にどんななんだよ。

 

休憩が空けると2部の『JAGUAR BEAT-ジャガービート-』が始まった。

舞空瞳さん演じるクリスタルバードが美しく舞っていると羽をもがれてしまうんだけど、彼女の舞によって美しい国が誕生し、JAGURが誕生する…(ということらしい)という始まりだった。クリスタルバードは創造神的な存在なのかな?舞空さん、白が似合っていて可愛い~!

その後タイトルの2ndFANTASYの「JAGUR BEAT」で主題歌が流れ出して、ほどなくして極彩色の衣装をまとったキャストの方々が一斉にワッと出てきて、あまりの情報の渋滞具合に確かにさっき(1部)のことを一旦すべて忘れた。 これでもかというくらい柄オン柄のJAGURの衣装、サブキャストの方々のカラフルな衣装…2階からでもすごく迫力があって、確かにすべてを忘れた。衣装がみなさんそれぞれ少しずつ違っていて、どの方のものも華やかで見てるだけで楽しかったな。あと人生で初めてラインダンスを見ました!!これがラインダンスか~!になった。

JAGUAR BEAT」のターンで礼さんがすごくカッコイイ歌を歌いあげるシーンがあって感動してたんだけど、イエモンのRock Starだった。それは…カッコいいに決まってる。

 

その後クリスタルバードとJAGUARは別の世界線?(それとも転生?)で度々出会い、別れ、などを繰り返していくような物語だったのだけど、私が特に好きだったのは3rd FANTSY「PARADISE JUNGLE」。

カジノでクリスタ(クリスタルバード)が羽を返してほしいとバファローに勝負を仕掛ける様を歌とダンスで表現しているのだけど、舞空瞳さんのアリスっぽい衣装が本当にお似合いで可愛い~~!!一番好き~~!!他のキャストさんも何人かアリスっぽい衣装だったので、本当に可愛かった~!クリスタとバファローがゲーム勝負をしている時のふたりの得意げな表情がカジノな雰囲気に合っていて素敵。

あとどの幕だか忘れてしまったのだけど、急にクララが立ったな感じのシーンがあって何で!?になった。衣装も急にアジアンになって…色んな世界が並行しているのかな~…と思いながら見ていた。

あと、どなたなのかわからないんだけど、薄いピンクの衣装をまとって踊る娘役のキャストさんの衣装がすごく可愛らしかった。神話を題材にしている6th FANTASY「NARKISSOSー星の砂漠の恋人たちー」も美しくも少しドロッとした雰囲気が他のギラギラした幕とは少し異質で、目を引いた。

友達のご贔屓さんの顔はすっかり覚えたので、衣装の特徴聞いていたからすぐ見つけられた。笑

フィナーレは初めて大階段から順番に降りて来られるキャストの方々が圧巻だった。ミュージカルでもここまで大勢での歌唱ってあまり聞く機会がなかったので、迫力もあるしパワーもあって、エネルギーをもらえるな、と思った。あとこれが大階段か…と、友達に聞いた通り、絶対に壊れなそうな頑丈さを感じて眺めていた(?)

 

長時間の演目だなと思ったけどあっという間に幕が下りた。1部がサクサク進むから面白かったのもあったし、キャストさんも衣装も華やかだったから見ているだけでも楽しかったし。それを友達に伝えたら喜んでいた。

あと、宝塚の公演は女性が男性を演じるという以上、区別のためになのか男役は強くてカッコよかったり、渋くてダンディだたりと男性性の強調がされていることを感じていて、私はどちらかというと可愛い男性が好きなので、男役の方にはそこまで惹かれず、単純に娘役の可愛い人に目が行っていたんだなと自己分析した。わかりやすいな~…。

 

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最初に少し書いた通り、私は女性のファンカルチャーのオタクでもあるので(?)折角だから、自分が普段いる舞台の界隈と比べて驚いた事とか違うな~と思った文化について最後に書き留めておこうかと思う。

1.空気が落ち着いている

まず会場に入って思ったのがこれ。老若男女様々な方がいらっしゃるように見受けられたけど、会場の空気に忙しなさがなくて、すごく時の流れが穏やかに感じるな~と思った。別に自分の界隈がいつもうるさいとかではないのだけど、何となく忙しない空気な時があるので。会場全体がそうした空気だから、自然と皆さん穏やかな感じになるのかな。高校生の団体さんとかもいたけど、うるさくする子とかいなかったし…。

 

2.拍手ポイントが決まっている

1部でトップ男役の礼さんが初めて登場した時に、ワッと拍手が巻き起こり、拍手ポイントなんだな!?と合わせて拍手をしたのだけど、登場時に拍手が巻き起こるという現場はほとんどないので驚いた。あと2部で銀橋に男役の方々が出てきた際にも拍手が巻き起こっていたので、なるほど…と思った。2部は段々慣れてきて拍手ポイントがわかるようになっていた(?)

 

3.拍手の統制が取れている

こちらも拍手関係なのだけど、1部の礼さん登場シーンで拍手した後に、止むタイミングが綺麗にそろっているのがすごい!!と思った。何となくパラパラと長めに拍手をする人の音とかが残ることはなく、ピタッと止むので…。その後もここだけではなく、各種拍手ポイントで兎に角綺麗に拍手が止まるので、そういう文化なんだな、と思った。

 

4.パンフレットが豪華

幕間に友達が見せてくれたのだけど、マジで分厚くてなんでも載ってる。すごい。なのに安い。長期間公演で大量に刷れるものだから値段についてはそれはそうだろうという所なのだけど、インタビュー関係も充実しているし、各組の公演スケジュールなども掲載されていて見応えがあって良いな、と思った。

 

5.私設のファンクラブでの団体観劇

友達はご贔屓さんの私設のファンクラブに入っていて、その方のファンみなさんで観劇をしましょうという日があり、その時にみんなでお揃いのスカーフを巻くんだと教えてくれて、そんな催しがあるんだ!?と驚いた。その日はチケットが少し取りやすかったりすることもあるとか。ファンクラブ用のチケットケースも見せてくれたのだけど、ご贔屓さんのお写真がプリントされていたりしてすごく凝っていて素敵だった。

私の界隈ではFCってせいぜい先行があってFC特典のブロマイドが付いてちょっとした動画が見られるくらいなので、ファンクラブの持っている意味合いが全然違って面白いな~と思った。あと同担同士で団結することがそもそもほとんどないので…。(有志で大きなお花を出す時くらいかな) 宝塚の私設ファンクラブについては昔少し本で読んだことはあったけど、実際に話を聞くと思っていた以上にパワーがあるのだなと思った。

 

以上、私の異文化体験の感想と記録である。(?)

組ごとに結構雰囲気が違うということも聞いたので、他の組の公演もまた今度観てみたいな~と思った。

*1:ちなみに2人ともバンギャル・元バンギャルである。バンギャル、バンドに行かなくなっても大体何かしらでオタクをしている。(私もですが…。) 最近は周りを見ると観劇に流れる人が多い印象。

*2:オケピより前の通路に出てくる時若干手すりが被るけどちょっと頭を下げれば見えたのでOK