※チケット譲渡に関するお話を扱う記事なのでそういった譲渡文化自体に抵抗のある方はスルーして頂けると幸いです。
少し前に、大好きな漫画が舞台化した。
推しが出てるわけじゃないけど、演出が好きな方だったので予定が合えば絶対行こ~~と思っていた。
しかしながら先行が行われていた当時は本気で予定が読めない時期だったので、推し以外の予定を迂闊に入れるわけにもいかず、近くなってからチケット手配しよう…ということにした。
そうこうしているうちに期日が近づいて来たので、「取り敢えずツイッターで譲渡出してる人を探してみよ」と検索を掛けてみた。
案の定、数人譲り先を探している人がいた。
それはまあ、そういう人を探していたので何も問題はなかったのだが、別の所で少し違和感を覚えた。
ツイートの書き方と言うべきか、様式と言うべきか、といった点である。
全てがそうであった訳では勿論ないのだが、こんな書き方をしているツイートが多く見受けられたのだ。
△△の譲り先を探しています
【日時】○/○
【金額】定価手数料
【座席】□列
【枚数】○枚
#△△譲 #△△ #☆☆(出演者の名前)
まず何に違和感を持ったかというと、テンプレートのように形式ばった書き方である。
勿論こうした書き方をする方もいらっしゃるとは思うが、私が見てきた舞台関係の譲渡は圧倒的にもっと簡素なものが多い。*1
例えば、こういったものである。
【譲渡】
△△ チケット
譲) ○/○ □列 ○連番
求)定価+手数料
このように「譲」「求」欄に必要事項をまとめて書き出しているものが多く、日時や枚数を1つ1つ【 】や《》でくくって書き出しているものは主流ではないように思える。
またツイートの冒頭も「譲り先を探しています」「交換してください」という文章で書かれたものよりも、【譲渡】【交換希望】といった箇条書きで簡素なものの方がよく見かけるように思う。
そして、もう1つ違和感を持ったのは例にも挙げたように、ハッシュタッグが盛んに使われていることであった。
私が今まで見てきた限りでは、舞台関係の譲渡でハッシュタグを付けているツイートはあまり見掛けたことがなかった。だから、おや?と思ったのである。ちなみにこれは同じ舞台の譲渡ツイートの中で上記のような形式ばった様式を取っていないツイートにもいくつか見られた傾向であった。
こういった点から、「何かいつもと違うな~」と感じながら眺めていた。
そうしてツイートを眺めながら、そういえば私、主演の子くらいしか出演者を把握してないぞ、ということに気付いた。
そもそも原作と演出家さんが好きで観に行こうと思っていたし、主演の子は前にも見たことがあって結構良さげな雰囲気だしオッケーと思っていたので、出演者のチェックを怠っていたのだ。
折角だからこの機会に調べておこう、と公式サイトをチェックしてこの人は知ってるなと思ったり、知らない子を調べたりしてみた。
そこであることに気づく。
出演者の中に元ジャニーズの、所謂「辞めジュ」(この呼称に関しては友人のジャニオタが度々使用していたので知っていた。)の子がいることに。
そこでピンと来て、ちょっと別のジャニーズの公演の譲渡を検索してみた。
ビンゴだった。
あの形式ばった譲渡募集の書き方、「様式」はジャニーズ界隈でよく用いられている書き方だったのである。私はジャニーズに詳しくないので存じ上げないのだが、恐らく何かが切っ掛けで(もしかするとツイッターでの譲渡が盛んになる前かもしれないと思っている)テンプレート的にこうした書き方の様式が用いられるようになったのであろう。
そしてもう1つ、譲渡募集にハッシュタグを用いるのは、ジャニーズに限らず主にアイドルの界隈でよく使われている手法だったのである。*2
なるほどなるほど、だから上記のような様式の譲渡募集が多く見られたのか。とても納得のいく答えを見つけられたように思う。
冒頭にも書いた通り、上記のような様式が多数ではあったものの全てがそういった書き方をしたツイートばかりではなく、見慣れた簡易な譲渡募集も勿論存在していたのは、舞台オタク及び俳優オタクと、元ジャニーズのオタクが混在した結果なのだということに気付くことが出来た。
と同時に、界隈によってこうした本当に些細な部分でも文化の「様式」の違いが現れてくるというのは非常に興味深いな、と改めて感じたりもした。
そういえば、界隈による譲渡の様式の違いという点でもう1つ思い出すことがある。
以前、推しが舞台で歌い手の方と共演した時に、歌い手側のファンの方とチケットの交換や譲渡のやり取りをすることがあった。
そこでやはり、「あ、こちらとは違う様式があるんだな」と感じたことがあった。
普段、舞台の界隈で譲渡のやり取りしている際は、2枚以上の連番のチケットは「○連番」といった書き方をするし、連番ではない1枚のチケットの場合は「単番」もしくはそのまま「1枚」と表現することが殆どである。
しかし、歌い手のファンの方々は2枚以上の連番のことを「○連」と呼ぶのはこちらと同様であるが、1枚、すなわち単番のチケットのことも「1連」という表現を用いていることに気付いたのである。
初めは少し戸惑ったが、なるほどそちらではそういう呼び方をするものなのね、と納得してしまえば、やはり面白い「様式」の差異の1つとして捉えることが出来た。
ジャニーズ型の譲渡の様式にせよ、「1連」という言い方にせよ、我々舞台界隈の譲渡の様式もそうであるが、きっと何か理由やバックボーンがあってその形式や呼び名が使われるようになったのだと思う。
インターネット時代の文化というのは中々発祥元がハッキリしないものも多いため、探しだすのは容易ではないかもしれないが、そうした部分に着目して些細な文化の違いを分析してみると、より大きな界隈自体やそこに属する人々の文化的な差異とか、反対に類似点が見えてくるのではないかという気がしてくる。
私にはあいにく、今の段階でそれを詳しく調べて分析している時間はないが、いつか触れてみたい部分ではあると思っている。
その時にはまたお付き合い頂けると嬉しい。